和牛が売れない時代に突入?和牛枝肉価格低迷の背景を徹底解説

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和牛子牛価格高騰と枝肉価格低迷で苦境に立つ肥育農家 肉牛
肥育農家を追い込む「買う時は高く、売る時は安い」価格ギャップ。
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2025年6月現在、国内最高峰のブランド牛として知られる和牛の枝肉価格が、過去数年で最低水準を記録しています。一方で、頭数不足により和牛子牛価格は2年ぶりに60万円台に突入。導入コストが高騰するなか、枝肉価格が物価高の影響で伸び悩むという「買う時は高い、売る時は安い」構造的な矛盾が生まれています。これまで“高級食材の象徴”として安定した需要を誇ってきた和牛が、なぜここまで落ち込んだのか。本記事では、経済的要因・消費者行動・供給過剰・政府支援策を多角的に分析し、今後の市場動向をわかりやすく解説します。

和牛さん
和牛さん

子牛価格は60万円台に上昇、導入コストと収益のギャップが拡大


1. 和牛枝肉価格の現状と最新データ

  • 2025年5月の東京市場卸売価格:A5和牛枝肉は1kgあたり2,486円。
  • 屠殺頭数の増加:2024年6月、和牛の屠殺頭数は41,679頭(前年比+3%)。供給過剰が顕在化。

過去4年で見ると、2020年のCOVID-19パンデミック時に一時的な落ち込みはあったものの、在宅需要の高まりや輸出拡大で価格は回復してきました。しかし、2024年以降は根本的要因が異なり、継続的な低迷が続いています。

牛さん
牛さん

コロナ禍の一時的回復から一転、2024年以降は構造的な下落へ


2. 経済的要因が与える影響

  1. インフレーションと購買力低下
    2024年8月の東京消費者物価指数上昇により、生活必需品を優先する消費者が増加。和牛のような高級食材は、後回しにされる傾向が強まっています。
  2. 金利上昇と家計負担増
    日本銀行の金融引締め姿勢による住宅ローン金利の上昇は、可処分所得を圧迫。レジャーや外食支出の削減につながり、高級レストランでの和牛需要も低下。
  3. エネルギー価格の高騰
    飼料輸送コストや施設の電力・燃料費が増大。生産コスト高止まりにもかかわらず、販売価格は下落という二重苦に直面しています。
  4. 構造的な人口動態
    少子高齢化が進む中、高齢世帯では食費抑制志向が強く、家計全体で高級食材への支出を見直す動きが顕著です。
牛さん
牛さん

物価高で和牛が“贅沢品”になっちゃったんだ…


3. 消費者行動の変化と選択肢の多様化

  • 交雑牛(F1)や老牛肉へのシフト
    和牛よりも安価でありながら、味わいに妥協のない選択肢として人気が上昇。実際、2025年6月にはF1(交雑牛)の相場が過去5年で最高値を更新しました。詳細は▶️2025年6月最新|F1(交雑牛)相場が過去5年最高値を更新!
  • 自宅調理・簡易メニューの広がり
    外食控えによる家庭内調理の増加で、焼肉やステーキよりも「すき焼き・しゃぶしゃぶ」に向いた薄切り肉の需要が減少。厚切り高級肉の購買頻度が落ちています。
  • 健康志向と代替タンパク
    牛肉全体の消費量は横ばいも、健康志向の高まりから赤身肉や植物性代替タンパク(大豆ミートなど)への関心が強化。
牛さん
牛さん

交雑牛(F1)が過去5年で最高値!和牛離れの象徴に


4. 供給過剰と飼養調整の難しさ

  • 飼養頭数の増加
    政府の交配奨励策や補助金が一時的に飼養頭数を押し上げ、一定期間後に出荷が重なるため市場に过剰供給をもたらしました。
  • 生産調整のリードタイム
    交配から出荷まで約3年を要する和牛生産の長期リードタイムが、急激な需要変動に対応しづらい要因に。
  • 品質維持コストの高騰
    フードシステムの効率化投資や飼料改良によるコスト増分を価格に転嫁しにくく、損益分岐点を下回る生産者が増加。
牛さん
牛さん

需要の波に合わせられないのが和牛の難しさなんだね


5. 政府支援プログラムの内容と課題

  • 補填制度の概要
    2024年7月より、黒毛和牛仔牛生産者が基準価格を下回った分の90%を補填する措置を実施。短期的な収益安定には一定の効果を発揮。
  • 課題点
    • 補填対象が仔牛までに限定され、成牛や枝肉段階には手当がない
    • 生産者の収益悪化ペースが補填策を上回りつつある
    • 中小・零細農家は手続き負担や資金繰り悪化で恩恵を享受しにくい
牛さん
牛さん

農家の現場感覚と政策のズレ、ここにもある気がする

肥育農家の収支バランスが崩壊

2025年に入り、和牛子牛の取引価格が2年ぶりに1頭あたり60万円を超える水準まで上昇しました。これは頭数不足による供給制限が主因で、繁殖農家にとっては追い風となっている反面、肥育農家には大きな負担となっています。

一方で、枝肉価格の低迷が続いていることにより、子牛導入コストと販売価格のギャップが拡大。特に飼料価格やエネルギーコストが高止まりしている現状では、肥育経営の採算が急速に悪化しています。

この「高い買い入れコスト」と「安い売却価格」という二重苦は、今後、肥育農家の廃業や規模縮小を招き、和牛供給体制そのものに影響を与える可能性があります。

牛さん
牛さん

子牛は高騰、でも売るときは値下がり…肥育農家は本当に苦しい!


6. 歴史的比較:2020年と2025年の違い

項目2020年(パンデミック期)2025年(現在)
主因一時的需要減少+在宅需要の増加構造的消費変化+供給過剰
価格回復要因輸出拡大と家庭内需要輸出拡大期待も国内需要縮小
支援策緊急融資・雇用調整助成金部分的な価格補填のみ

過去とは異なり、現在の価格低迷は一時的なショックではなく、構造変化の色合いが濃い点に注意が必要です。

牛さん
牛さん

輸出に期待しつつも、国内需要が縮小しているのが怖い


7. 今後の市場展望と生産者への提言

  1. 輸出市場のさらなる開拓
    アジア・米国での和牛ブランド浸透を推進し、国内低迷を補完。付加価値を高めた商品開発も重要。
  2. コスト構造の抜本改革
    飼料の自家生産・バイオマス利用によるエネルギーコスト低減、ICT導入による効率化投資を加速。
  3. 多様な販売チャネルの確保
    D2C(直販)サイトや定期便サービスで中間マージンを削減し、消費者と生産者を直接つなぐ。
  4. ブランドストーリーの発信強化
    流通や観光と連携した“体験型和牛”プロモーションによる顧客ロイヤルティ向上。
牛さん
牛さん

輸出強化で国内需要の低迷を補う戦略が重要


まとめ

  • 価格下落の現状:2025年5月の東京卸価格は1kgあたり2,486円。
  • 経済的要因:インフレ、金利上昇、エネルギー高騰、少子高齢化が購買力を圧迫。
  • 消費者行動:交雑牛(F1)や老牛肉へのシフト、家庭内調理・代替タンパクの台頭。
  • 供給過剰リスク:飼養頭数増加と長期リードタイムが市場調整を難化。
  • 政府支援策:仔牛補填制度は短期安定に寄与するも、成牛・枝肉段階の支援が不足。
  • 今後の対策:輸出強化、コスト構造改革、D2C販路拡大、ブランドストーリー発信による価値向上。

和牛枝肉価格の低迷は、高インフレや消費者行動の変化、供給過剰、構造的な人口動態が複合的に影響した結果です。政府支援は短期的なセーフティネットとして機能しますが、生産者が持続的に利益を確保するには、コスト削減と販路開拓、ブランド強化といった抜本的対策が求められます。国内市場の縮小リスクを輸出で補いながら、D2Cなど新しい販路を活用し、次世代につながる和牛産業を構築していきましょう。

牛さん
牛さん

供給過剰と長い生産リードタイムが市場調整を難しくしている

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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