加工原料乳補給金:9.11円→12円03銭に上昇、酪農現場への影響を試算

加工原料乳補給金が12円03銭に引き上げ、酪農経営への影響を解説するイメージ 酪農
加工原料乳補給金が12円03銭に上昇、酪農現場への影響を検証
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政府・自民党は2026年度の畜産・酪農対策を実質決着させ、加工原料乳の生産者補給金等(ALIC加算含む)の合計単価は1kg当たり12円03銭となりました。本記事では決定数値の内訳と舞台裏、酪農現場への実務的インパクトを表や試算で示し、今後の需給・飼料対策の要点を専門家視点で整理します。

1) 決定数値の内訳(一目で分かる表)

項目令和7年度(参考)令和8年度(決定)
加工原料乳生産者補給金(単価)9.09円/kg9.11円/kg+0.02円
集送乳調整金(単価)2.73円/kg2.83円/kg+0.10円
ALIC事業(相当加算)0.08円/kg0.09円/kg+0.01円
合計(実質)12.03円/kg+0.13円
総交付対象数量325万トン325万トン(据え置き)
ALIC事業分(対象量)25万トン32万トン+7万トン

出典:政府・与党の決定・業界報道を集約。補給金内訳は加工原料乳補給金9.11円、集送乳2.83円、ALIC0.09円。

2) 舞台裏と政治的な配慮 — なぜ「12円台」に乗ったか

12円台への乗せは単純な算術的改定だけでなく、ALIC事業の活用や政治判断が背景にあります。自民党農林議員の働きかけや、食料安全保障を重視する内閣方針が調整を後押ししました。短期の飼料高騰や地域事情(南九州など)も価格決定に影響しています。

3) 肉用子牛保証価格の主要引上げ(セーフティーネット)

併せて肉用子牛の保証基準価格が引き上げられ、主な値は次の通りです(前年度差):

  • 黒毛和種60万円(+2.6万円)
  • 褐毛和種:54.7万円(+2.4万円)
  • その他肉専用種:34.8万円(+1.4万円)
  • 乳用種:17.4万円(+1.0万円)

子牛保証価格は市場下落時の差額補填(セーフティーネット)です。報道を基に整理しています。

4) 現場(酪農家)への実務的インパクト試算(概算)

下は分かりやすくするための概算例です(単年度、概算)。

想定搾乳量補給金上乗せ分(/kg)年間効果(概算)
月3,000kg(小規模)0.13円/kg(実質増分)3,000kg×12ヶ月×0.13円 ≒ 4,680円/年
月20,000kg(中規模)0.13円/kg20,000×12×0.13 ≒ 31,200円/年
月100,000kg(大規模)0.13円/kg100,000×12×0.13 ≒ 156,000円/年

注:今回の「12.03円」は合計ベース(補給金+調整金+ALIC)であり、事業者が直接受け取る手取り影響は販売形態や契約によって異なります。上乗せ額は1kg当たり+0.13円(実質)であり、搾乳量規模に応じた影響は限定的ですが、累積すると経営安定化の一助になります。

5) 残された課題と現場で抑えるべきポイント

  1. 生乳需給の即時対応:年末年始の廃棄回避策(乳製品仕向け拡大や一時的買い上げスキーム)を確認・準備する。
  2. 飼料高騰対策:JA全農の配合飼料価格見直しで1〜3月期に大幅上昇予定(トン当たり約4,200円の上げ見込み)。国産粗飼料拡大の動きだが短期改善は難しいため、飼料コストの管理が必須。
  3. ALIC事業の活用:ALIC加算分や交付対象の活用方法(対象数量の増加分)を確認し、事業申請などの手続きを怠らない。

結論

  1. 結論:加工原料乳補給金等はALIC加算込みで12円03銭/kgに上昇。子牛保証価格も主要種で引上げ。 
  2. 根拠:自民党の19日決着→農水省手続き→関係資料・報道で内訳が公開。主な数値は補給金9.11円、集送乳2.83円、ALIC0.09円。 
  3. 行動(現場向け):規模別の手取り影響試算、青刈り等国産飼料拡大によるコスト圧縮の検討、年始の生乳需給回避策の準備を推奨。

今回の改定は「政治的配慮+制度運用の組合せ」で実質的に単価を上乗せしたものです。1kg当たりの増分は小さいものの、制度全体(ALIC活用、交付対象量の拡大、子牛保証価格の引上げ)で現場の下支えを強める方向です。年明けの飼料価格上昇リスクと需給調整は依然大きな課題なので、各生産者は(1)交付手続き・制度活用の確認、(2)飼料コスト管理、(3)需給ショックの短期回避策を優先してください。

次の行動案(チェックリスト)

  • 補給金・調整金の受給条件を確認(指定事業者申請・販売計画など)
  • ALIC事業での申請・活用可能分を所属団体に確認
  • 1〜3月の飼料コスト上昇に合わせた資金繰り案を作成

※本記事は報道・公的資料を基に専門家視点で整理したものです。数値は政府・業界報道の公表値を参照しています。記事末に出典を明記しています。

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出典・参考

  • 「26年度畜酪決着の舞台裏」日本農業新聞(JaCom)記事(2025/12/22)。
  • 加工原料乳補給金等の決定報道(DailyDairyNews等の業界報道)。
  • 農林水産省:加工原料乳生産者補給金制度説明ページ(制度概要・過去値)。
  • ALIC:加工原料乳交付事業関連資料。
この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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