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はじめに
酪農でよく悩む「飼料のバランス」「乳の成分」「牛の健康」。実は、ルーメン内(牛のおなかの第一胃)で作られる「揮発性脂肪酸(VFA)」を理解し、特にプロピオン酸を増やすことで、牛のエネルギー効率と乳質をぐんと良くできます。

牛さん
飼料のバランスや乳の成分、牛の健康…これらを改善するカギはルーメン内のVFA、特にプロピオン酸にあり!
1. VFA(揮発性脂肪酸)って何?
- VFAとは?
ルーメンの中にいる微生物が、エサの炭水化物(草や飼料の糖質)を発酵させてつくる短い脂肪酸の総称。 - 牛のエネルギー源
牛が必要とするエネルギーの約70%をVFAでまかないます。
種類 | 量の目安 | 多くつくられるときのエサ | 役割 |
---|---|---|---|
酢酸 | 全体の50–60% | 粗飼料(牧草)多め | 乳脂肪(クリーム分)や体脂肪の材料 |
プロピオン酸 | 全体の12–18% | 濃厚飼料(デンプン・糖質)多め | 肝臓でグルコースをつくり、乳糖の材料 |
酪酸 | 全体の18–20% | エサにあまり左右されない | ルーメンや腸の壁の細胞を元気に保つ |

牛さん
VFA(揮発性脂肪酸)は、牛が必要とするエネルギーの約70%を供給する大事なエネルギー源なんです!
2. プロピオン酸が重要な理由
2.1 牛はどうやって「糖」をつくる?
- 牛は腸からブドウ糖(グルコース)をほとんど吸収できません。
- そこでプロピオン酸を肝臓で「糖新生」し、血液中のグルコースをつくります。
- 乳を1日35 kg出す牛では、約1 575 gもの乳糖が必要。その大部分がプロピオン酸由来です。

牛さん
牛はプロピオン酸を肝臓で『糖新生』して、血液中にグルコースを作ります!
2.2 健康と生産性への影響
- プロピオン酸はエネルギー変換効率が高く、
- 血糖値を安定させ
- 食欲を保ち
- ストレス耐性も助ける
- 濃厚飼料を多くした群では、給餌前27 mM→給餌後49 mMまでプロピオン酸が増え、牛がより元気になる実験データもあります。

牛さん
プロピオン酸はエネルギー変換効率が高く、牛の健康と生産性に良い影響を与えるんです!
「濃厚飼料」とは詳しい説明はこちらの記事をチェック
3. 飼料でVFAバランスを整えるコツ
3.1 「高濃厚飼料(HC)」を賢く使う
- デンプンや糖質が多い飼料(コーンなど)を増やすと、プロピオン酸をつくる菌が増えます。
- ただし一気に増やすとルーメンの酸度(pH)が下がるので注意。

牛さん
でも注意! 一気に増やすと、ルーメンの酸度(pH)が下がる可能性があるので、徐々に調整することが大切です。
3.2 「粗飼料(HF)」とのバランス
- 牧草などの粗飼料が少なすぎると酢酸が減り、pH低下で「アシドーシス(おなかの酸っぱい病気)」のリスクが高まります。
- 目安の組み合わせ
- HF:HC = 40:60 ~ 50:50
- 牛群の乳量や体調に応じて微調整してください。

犬さん
牧草などの粗飼料が少なすぎると、酢酸が減少して、ルーメンのpHが低下するリスクがあります。その結果、アシドーシス(おなかの酸っぱい病気)を引き起こす可能性が高まります。
4. ルーメンの健康管理
4.1 アシドーシスに気をつける
- 発酵が進みすぎてpHが低くなると、
- 食欲不振
- 下痢
- 体調不良
といった症状が出ることがあります。

牛さん
発酵が進みすぎてルーメンのpHが低くなると、ルーメンアシドーシスという病気になります。
4.2 カンタンモニタリング方法
- ルーメン液を採ってpHやVFAを測定(専門器具が必要)。
- フンの状態チェック(糞便スコア)や、牛の採餌(えさを食べる)時間、行動の変化を観察。
5.1 モニタリングと改善
- 月1回:ルーメンpHとVFAバランスを測定
- 毎月:乳脂肪率・乳糖率のチェック
- 定期的:体況スコア(BCS)を記録
- 報告会:スタッフ間で結果を共有し、飼料レシピをアップデート
6. まとめとこれからの展望
- **VFA(酢酸・プロピオン酸・酪酸)**は、牛のエネルギー源の肝心要。
- 特にプロピオン酸をしっかりつくることで、
- 乳質アップ
- 健康維持
- 生産性向上
が期待できます。
- ポイントは「高濃厚飼料」と「粗飼料」のバランス管理と、定期的なモニタリング。
- 将来的には、ルーメン内の細菌群を分析して、さらにきめ細かく飼料を設計する「個別最適飼料」への応用も進みそうです。

牛さん
VFA(酢酸・プロピオン酸・酪酸)は、牛のエネルギー源の肝心要!
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