乳牛のケトーシスは、分娩後のエネルギー不足から発生し、放置すると乳量減少や健康障害を招く代謝性疾患です。本ガイドでは、原因や症状、現場で簡単に実施できる診断方法から効果的な予防策や治療法までわかりやすく解説。さらに、血中BHB(β‑ヒドロキシ酪酸)のモニタリング手順や経営への影響にも触れ、酪農家の生産性向上をサポートします。

早期発見・早期対応が酪農経営のカギ!乳量の減少を防ごう!
ケトーシスとは?
分娩期から初期乳期の乳牛は、乳生産に必要なエネルギーが急増しますが、摂取量が追いつかず「負のエネルギーバランス(NEB)」に陥りやすい状態です。その結果、体脂肪を分解して非エステル化脂肪酸(NEFA)をエネルギー源としますが、肝臓で過剰にケトン体(アセトン・アセト酢酸・β‑ヒドロキシ酪酸)が生成され、これが体内に蓄積してしまうとケトーシスを発症します。
- 臨床性ケトーシス:食欲不振や神経症状が明らかに現れる
- 亜臨床性ケトーシス:症状が目立たず乳量・乳質低下で発覚

β‑ヒドロキシ酪酸(BHB)が高くなると“隠れケトーシス”のサイン!
原因と発生メカニズム
- 負のエネルギーバランス(NEB)
分娩前後の高産期には乳生産によるエネルギー需要が増大。 - 脂肪動員の亢進
NEB を補うため体脂肪を分解し、NEFA が血中に放出。 - 肝臓でのケトン体生成
過剰な NEFA がケトン体に変換され、血中・乳中へ流出。 - ケトン体蓄積
β‑ヒドロキシ酪酸(BHB)などのケトン体が増加し、代謝ストレスを誘発。

NEFAが増えると肝臓がフル稼働 → ケトン体がどんどん作られる!
症状と種類
種類 | 主な症状 |
---|---|
臨床性ケトーシス | 食欲不振、明らかな乳量減少、体重減少、神経症状 |
亜臨床性ケトーシス | 気づきにくい乳量・乳質低下、体細胞数(SCC)上昇 |
- 食欲不振:消化管運動の低下
- 乳質変化:乳脂肪率↑・タンパク質率↓、SCC 上昇
- 体重減少・脱水:エネルギー不足と水分不足
- 神経症状:まれに興奮、不自然な行動

食欲低下・乳量減・体重減…全部そろったら要注意!
診断方法
診断手法 | 検査対象 | 判定基準 | 特記事項 |
---|---|---|---|
血液検査(BHB) | 血中 β‑ヒドロキシ酪酸 | ≥ 1.2 mmol/L | ポータブル測定器で現場検査 |
乳検査(BHB) | 乳中 BHB | ≥ 100 μmol/L | ディップスティック方式 |
尿検査(アセト酢酸) | 尿中 アセト酢酸 | “small” 以上(約15 mg/dL) | 読取タイミングに注意 |
群検査 | 改良団体による乳ケトン体検査 | 地域別基準 | 群レベルのリスク分類に有効 |

血中BHBが1.2以上なら、ケトーシスの可能性大!

予防策
- 体調スコア管理
- BCS(5点満点)が3.5~3.75を維持
- 給餌環境の最適化
- 分娩前3週間:ストレス最小化、給飼量維持
- 配合飼料設計
- 非繊維性炭水化物38〜41%
- 中性洗剤繊維28〜30%
- 飼料添加物活用
- ナイアシン、酵母製品、瘤胃保護コリンを分娩前2〜3週間から

分娩3週間前が勝負!給餌量を落とさない工夫を
治療法
- プロピレングリコール経口投与
1頭あたり約300 mL/日を5日間。亜臨床性ケトーシスでは約70%の回復率。 - ビタミンB₁₂投与
低血糖時に同時投与で早期改善。 - 静脈内グルコース注射
神経症状を伴うケースで即効性あり。

プロピレングリコールでエネルギー補給!5日間が勝負
経済的影響
- 発生率:亜臨床性で15~40%。分娩後9日以内で40%超との報告も。
- 損失額:1頭あたり600~1,000ユーロ(約8万~13万円)、二次疾患含めるとさらに増大。
- 間接コスト:蹄病、子宮疾患、廃用リスク上昇によるロス。
効果的な予防&早期診断は、酪農経営の安定に直結します。

1頭あたり最大13万円の損失⁉ ケトーシスは“見逃せない経営リスク”です
BHB(β‑ヒドロキシ酪酸)とは?
肝臓で生成される主要ケトン体「BHB」は、ケトーシス管理の指標として極めて重要です。分娩前後の移行期に血中・乳中のBHBをモニタリングすることで、亜臨床性ケトーシスを早期発見・対策できます。
- 血中基準:1.0~1.2 mmol/L 超で要注意
- 乳中基準:100 μmol/L 超で亜臨床性ケトーシスの可能性

BHBは“見えないケトーシス”を見抜く最強の指標です

まとめ
乳牛のケトーシスは、原因・症状・診断・予防・治療をしっかり押さえれば、経済的損失を大幅に減らせます。特に亜臨床性ケトーシスは見逃しがちなので、BHBモニタリングを活用して早期対応を心がけましょう。本記事と実践ガイドを参考に、分娩前後の管理体制を強化してください。
以上のポイントを日々の現場管理に取り入れ、早期発見・早期対応と継続的な予防策で乳牛の健康を守りましょう。

ケトーシスの早期発見が、乳牛の健康と収益を守るカギ!
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