日本の酪農は乳牛の健康と生産性を支える飼料として、とうもろこしに大きく依存しています。しかし、国際情勢や需要変動の影響で飼料価格が急騰し、多くの酪農家が経営難に直面しています。本記事では、とうもろこしの栄養価や価格動向、そして持続可能な酪農への転換策を草地・飼料生産学研究室に所属していた筆者がご紹介します。

牛さん
酪農の基盤!乳牛飼料としてのとうもろこし依存度は非常に高い!
日本の酪農概況
- 乳牛頭数
2021年時点で日本全国の乳牛は約136万頭。うち99%がホルスタイン種で、北海道が生乳生産全体の56%を担っています。 - 農場規模の拡大
1965年には1戸あたり平均3.4頭だった乳牛が、2021年には97.6頭に増加。大規模化が進み、年間1,000トン以上出荷する「メガファーム」も登場しています。 - 1頭あたり乳量
1965年の年間4,250kgから2020年には8,806kgへと飛躍的に増加。改良技術や飼養管理の向上が背景にあります。

牛さん
1頭あたり乳量は1965年の4,250kgから8,806kgへ倍増!
とうもろこしの飼料価値と役割
栄養成分と機能
とうもろこしはデンプンを豊富に含み、高エネルギー飼料として位置づけられます。
- エネルギー源:乳牛の維持・成長・乳量向上に直結
- 消化率:デンプンの消化吸収が良く、飼料効率を高める
- ビタミン・ミネラル:ビタミンA前駆体やマグネシウムを含む

ミルク生産への影響
配合飼料にとうもろこしを適切に配合すると、
- 乳量の向上:給飼量1kgあたりで平均0.5~1kgの乳増加
- 乳成分改善:乳脂肪率や乳タンパク質率の安定化
- 健康維持:エネルギー不足による体調不良を防止

牛さん
逆に給与しすぎるとルーメンアシドーシスという疾病の原因になるよ!
国際情勢と価格動向
近年、国際的な供給不安や需給バランスの変化でとうもろこし価格が急騰。
- 価格推移:2020年は約67,000円/トン→2023年には約100,000円/トンへ1.5倍上昇
- 主な要因
- ウクライナ情勢による輸出減少
- 中国をはじめとするアジアの需要増
- 南米(ブラジル・アルゼンチン)の気象リスク
- 国内への波及:輸入飼料コストが飼料全体価格を押し上げ、経営を圧迫

経営への影響と課題
- 赤字経営の実態
2023年調査で85%の酪農家が赤字経営。4割超が月間100万円以上の赤字を抱えています。 - 飼料費の割合
総経費の約40~50%が飼料費。価格変動リスクが最も大きいコスト項目です。 - リスク管理
- 長期契約による価格平準化
- 国産原料の活用拡大(飼料自給率の向上)
- 共同購買によるコストダウン

牛さん
飼料費は総経費の40〜50%。価格変動リスクが大きい!
持続可能な酪農への転換策
- 飼料自給率の向上とうもろこしだけでなく、牧草や他の飼料作物を自社生産し、輸入依存を軽減。
- 草地酪農の推進放牧やロータリーテーブルを活用し、牛本来の行動を尊重しながら乳質向上を図る。
- ふん尿リサイクルふん尿を堆肥化し、とうもろこし畑の肥料として再利用。土壌改良とコスト削減を同時に実現。
- スマート酪農の導入、センサーやAIによる給餌管理で過不足を防ぎ、食いつきを最適化。省力化とコスト管理を両立。

牛さん
飼料自給率向上で輸入依存を減らし安定経営を目指す!
まとめ
- とうもろこしは高エネルギー飼料として牛の乳量・健康に欠かせない存在。
- 国際価格の急騰が経営を圧迫し、飼料費が赤字の主因に。
- 自給率向上や草地酪農、ふん尿リサイクルなどで持続可能性を追求すべき。
- ICTや共同購買でリスクを軽減しつつ、品質と収益性の両立を目指そう。

牛さん
とうもろこしは高エネルギー飼料で乳量向上と健康維持に必須!
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