日本の和牛は99.9%が親戚?但馬牛が「神戸牛の素牛」と呼ばれる理由

兵庫県の但馬牛と神戸牛の比較、霜降り肉の美味しさ 肉牛
但馬牛は日本の和牛の原点
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高級牛肉として世界にその名を知られる「神戸牛」。
実は、その神戸牛も元をたどれば「但馬牛(たじまうし)」であることをご存知でしょうか?

「但馬牛と神戸牛、名前は違うけど何が違うの?」
「どっちの方が美味しいの?」

そんな疑問を持つ方も多いはずです。
実は、日本の黒毛和牛の99.9%は、兵庫県北部で育った但馬牛の血統につながると言われています。つまり、但馬牛を知ることは、日本の和牛のルーツを知ることそのものなのです。

この記事では、現役の畜産農家である筆者が、但馬牛の奥深い歴史や特徴、そして神戸牛との決定的な「違い」について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
これを読めば、焼肉やステーキがもっと美味しく、深く味わえるようになります。

但馬牛とは?全国の和牛の「素牛」

但馬牛(たじまうし)とは、兵庫県北部の但馬地方(美方郡、新温泉町など)で古くから飼育されてきた黒毛和種のことを指します。

兵庫県の観光マップ、但馬牛や姫路城など主要スポット表示
但馬牛や姫路城など、兵庫県の主要観光スポットを示すマップ。

読み方は、牛そのものを指すときは「たじまうし」、お肉になった状態を「たじまぎゅう」と呼ぶのが一般的です。

但馬牛の最大の特徴は、「素牛(もとうし)」としての優秀さです。
松阪牛や近江牛など、日本には有名なブランド牛がたくさんありますが、実はそれらの多くが「但馬牛の子牛」を買い付け、それぞれの土地で育て上げたものなのです。

和牛全国マップ|地域別ブランド牛の特徴と産地一覧
全国のブランド和牛を地域別にまとめたマップ

ポイント:
但馬牛は、優れた遺伝子を持つ「お母さん牛・お父さん牛」として、日本のブランド和牛界を支える屋台骨のような存在です。

【徹底比較】但馬牛と神戸牛の違い・関係性

よく混同される「但馬牛」と「神戸牛」
結論から言うと、この2つは全く別の牛ではなく、同じ牛です。

神戸牛ランプ肉の生肉イメージ
神戸牛ランプ肉。赤身の旨みと柔らかさが楽しめる部位。

神戸牛とは、兵庫県産(但馬牛)のうち、さらに厳しい基準をクリアした「選ばれしエリート」に与えられる称号なのです。違いを分かりやすく表にまとめました。

項目但馬牛(たじまぎゅう)神戸牛(神戸ビーフ)
血統兵庫県産の黒毛和種
(純血の但馬牛)
但馬牛であることが必須条件
格付け(ランク)歩留等級:A・B
肉質等級:2以上
歩留等級:A・B
肉質等級:4以上 (BMS値No.6以上)
関係性親(広義のグループ)子(選び抜かれたトップブランド)
但馬牛と神戸牛の比較イメージ、特徴と関係性の図解

味の違いはあるの?

基本的には同じ血統・同じ環境で育っているため、味の方向性は似ています。
しかし、神戸牛に認定される肉は霜降り(サシ)の基準値(BMS)が高いため、より口溶けが良く、脂の甘みを強く感じる傾向があります。

一方、但馬牛ブランドとして流通しているお肉も、赤身の旨味が濃く、十分に最高級の味わいを楽しめます。「あえて赤身の強い但馬牛を選ぶ」という通なファンも多いですよ。

なぜ美味しい?但馬牛の3つの特徴

世界中の美食家を唸らせる但馬牛。その美味しさには、明確な理由があります。

1. 芸術的な「霜降り」と「小サシ」

但馬牛の肉質は、筋肉の繊維が細かく、そこに「サシ」と呼ばれる脂が細かく入り込みます。これを業界用語で「小サシ(こざし)」と呼びます。
大雑把な脂ではなく、きめ細かな脂が入ることで、口に入れた瞬間にフワッと溶ける食感が生まれるのです。

ザブトン(肩ロース)黒毛和牛の焼肉・とろける霜降り
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2. 低温で溶ける良質な脂

但馬牛の脂は融点(溶ける温度)が低く、人肌でも溶け出すほど。食べた時にお腹に持たれにくく、サラッとした旨味が口いっぱいに広がります。

3. 伝統的な飼育環境

山で飼い、草で育つ」と言われるように、但馬地方は山間部で平地が少ない地域です。
この厳しい自然環境と、農家の愛情ある管理が、引き締まりつつも柔らかい絶妙な肉質を育て上げます。このシステムは世界農業遺産「兵庫美方地域」としても認定されています。

99.9%のルーツ!名牛「田尻号」と歴史

但馬牛を語る上で欠かせないのが、その特殊な「歴史」です。
実は、日本国内の黒毛和牛の99.9%が、ある一頭の但馬牛の血を引いていることをご存知でしょうか?

伝説の名牛「田尻号(たじりごう)」

明治時代から昭和にかけて、兵庫県美方郡で活躍した種雄牛「田尻号」。
彼の遺伝子は非常に強力で、優れた肉質を確実に子孫に残すことができました。現在、全国で食べられている美味しい和牛のほぼ全てが、この田尻号の子孫にあたります。

純血を守る「閉鎖育種」

但馬牛がこれほど優れた遺伝子を残せた理由は、「閉鎖育種(へいさいくしゅ)」にあります。
これは、他地域の牛の血を混ぜず、但馬牛同士だけで交配を続けるという非常に厳格なルールです。

  • 他県の牛とは交配させない
  • 明治時代に全国に先駆けて「牛籍簿(戸籍)」を整備

この徹底した血統管理があったからこそ、但馬牛は「和牛のルーツ」として絶対的な地位を確立しているのです。

まとめ:但馬牛は和牛の原点にして頂点

今回は、黒毛和牛のルーツである但馬牛について解説しました。

記事の要点まとめ

  • 但馬牛は兵庫県産の黒毛和種で、全国のブランド牛の「親」的存在。
  • 神戸牛は、但馬牛の中でも特にランクの高い「選抜メンバー」。
  • 名牛「田尻号」と徹底した血統管理が、世界最高峰の味を作っている。

私自身、普段牛と接している身として、但馬牛の血統が持つ力強さには日々驚かされます。
スーパーや焼肉店で「但馬牛」や「神戸牛」の文字を見かけたら、ぜひその背景にある長い歴史と、農家のこだわりを思い出して味わってみてください。

もし兵庫県を訪れる機会があれば、現地の牧場や精肉店で、本場の味を体験してみることを強くおすすめします!

この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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