分娩後乳牛の第四胃変位|原因・症状・治療・予防ガイド

分娩後に発生する乳牛の第四胃変位を解説する図解 酪農
分娩後の乳牛に多い第四胃変位
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第四胃変位は、分娩後1か月以内の乳牛に多く発生する消化器疾患です。第四胃が本来の位置から左右にずれることで、食欲不振や乳量減少、重度の代謝異常を招き、放置すると生産性の大幅低下につながります。本記事では、原因・症状・診断・手術治療・予防策をわかりやすく解説し、分娩後の乳牛管理に役立つ実践的な知識をお届けします。

牛さん
牛さん

第四胃変位は早期発見がカギ! 放置すれば乳量減少や代謝異常の原因に…

第四胃変位とは?

  • 定義:第四胃(abomasum)がガス圧で膨らみ、腹腔内の正しい位置から左(LDA)または右(RDA)にずれてしまう状態。
  • 発生時期:分娩後1か月以内に約90%が起こる。
  • 発生率の目安:年間分娩頭数の2~5%以内に抑えることが理想。

ポイント

  • 分娩によって大きく空いた子宮スペースに胃が滑り込みやすくなる
  • 産後のストレスやカルシウム不足がアトニー(蠕動運動低下)を招く
牛さん
牛さん

90%は産後1か月以内に発症! 今が一番危ない時期!

Ruminant stomach system of a dairy cow showing rumen, reticulum, omasum, and abomasum
乳牛の4つの胃(反芻胃)の構造図

原因を3つの視点で理解しよう

  1. スペース増加
    • 分娩直後、子宮が腹腔から消え、急に広くなるスペースを第四胃が占拠しやすくなる。
    • 特に乾乳期に十分な粗飼料を摂取できず、ルーメン(第一胃)が収縮するとリスクUP!
  2. 胃の運動低下(アトニー)
    • 分娩時のカルシウム需要増加で低カルシウム血症を起こすと、胃の蠕動運動が弱まる。
    • 蹄病などで長時間動けず運動不足になると、さらにガス滞留が進む。
  3. ガス蓄積の増加
    • 高濃度飼料に偏った配合や、給飼間隔・量のムラにより異常発酵を起こす。
    • 牛舎の環境(通気性・清潔さ)が悪いとストレスで食が細くなり、さらにバランスを崩す。
牛さん
牛さん

Ca不足 → 胃の動きが鈍る → ガスが溜まって変位しやすく!

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こんな症状が出たら要注意!

症状詳細
食欲不振胃内圧が上がり、餌を食べたがらなくなる
乳量減少栄養吸収低下により、特に牛乳の生産量・質が落ちる
下痢・軟便胃の機能不全が腸へ影響し、便性状がゆるくなることがある
脱水・代謝異常代謝性アルカローシス(低クロール血症)、低カリウム血症など
触診での“隙間”LDAでは最後肋骨と第一胃の間に手が入り込むスペースが現れる
聴診での“ピン音”腹側を聴診すると「キンキン」という高調音が聞こえる

症状が軽くても、早期に異変を察知し獣医師に相談しましょう。

牛さん
牛さん

早期発見・早期対応が、乳牛を守る第一歩!


診断方法:すばやく確実に

  1. 聴診(Auscultation)
    • 肘から腹側にかけて聴診器を当て、「キンキン」というping soundを確認。
    • 腹部を軽く揺すって「シャバシャバ」や「ゴボゴボ」の液体音を聞く。
  2. 触診(Palpation)
    • 左側LDAでは最後肋骨部に手を差し込み、第一胃と肋骨間に隙間があれば陽性。
  3. 血液検査
    • 低クロール血症(hypochloremia)→代謝性アルカローシス
    • 低カリウム血症(hypokalemia)→筋収縮低下
    • 低カルシウム血症(hypocalcemia)→蠕動運動さらなる低下
牛さん
牛さん

腹部を軽く揺らして異常音をチェック!


治療法:手術で根本改善

立位右膁部切開大網固定法(Omentopexy)

  1. 切開:右膁部(三角窪み)を立位のまま15~25cm切開
  2. 大網固定:第四胃に付着する大網(omentum)を腹壁に縫合
  3. ガス除去:バイアルインジェクターを用い、胃内ガスを排出
  4. 麻酔:硬膜外麻酔(第13胸椎〜第1腰椎間)にキシラジン+リドカイン
  5. 術後管理:無菌操作、抗生物質投与で感染予防

所要時間:熟練獣医で約20分
メリット:再発率が低く、術後回復が早い


日常でできる予防策

  1. 餌管理の徹底
    • 分娩前後の粗飼料量を十分に確保し、ルーメン充実度を維持
    • 濃厚飼料とのバランスを保ち、過剰発酵を防止
  2. ルーメンフィルスコア(RFS)の活用
    • 週1回程度、第一胃の「張り具合」をチェックし記録
    • スコアが低下傾向にあれば即座に飼料配合を調整
  3. カルシウム・ミネラル補給
    • 乾乳期から産褥期にかけて、適切なカルシウム補給を実施
    • ビタミンE・セレンなど抗酸化物質も併用すると良い
  4. 運動量の確保
    • 放牧または通路散策で1日30分程度の歩行を促し、蠕動運動を活性化
  5. 環境・ストレス管理
    • 牛舎内の床材・通気性を改善し、蹄病やストレス要因を低減
牛さん
牛さん

粗飼料不足は第四胃変位の大きな要因!ルーメンの充実がカギ。


まとめ

分娩後の乳牛に発生しやすい第四胃変位は、早期発見・治療・そして日々の予防管理が鍵です。

  • 原因を知り、分娩前後のリスク要因を最小化
  • 症状を見逃さず、聴診・触診・血液検査で迅速診断
  • 手術で根本治療し、術後ケアも徹底
  • 餌管理・健康チェックで発生率を2~5%以内に抑える

乳牛の健康は農場の収益力に直結します。この記事を参考に、現場での実践につなげていただければ幸いです。

牛さん
牛さん

第四胃変位は、“早期発見・予防”がすべて!

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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