アボンダンスチーズは、フランス・アルプス地方のアボンダンス渓谷で生まれたセミハードタイプの伝統チーズです。豊かな自然が育む牛乳から作られ、フルーティーでナッツのような風味と濃厚なコクが楽しめます。本記事では、アボンダンスチーズの歴史や製法、味の特徴、美味しい食べ方、ワインや日本酒とのペアリングまでを詳しく解説します。
アボンダンスチーズの歴史と産地
アボンダンスの名は、フランス南東部・オート=サヴォワにある「アボンダンス渓谷(Val d’Abondance)」に由来します。名前自体が「豊穣(豊富さ)」を意味し、豊かな草地と澄んだ水がチーズ品質に寄与してきました。
起源は中世にさかのぼり、14世紀ごろには修道院で僧侶がつくっていた記録が残っています。近代では伝統製法を守るため1990年にAOP(原産地呼称保護)として保護され、生産地域・飼養方法・製造手順が厳格に定められています。これが現在の希少性と高品質の根拠です。
ポイント:アボンダンスは生乳を使い、サイレージ(発酵飼料)禁止など飼料管理も厳格。結果として「牧草由来の風味」がチーズに反映されます。

どのように作られるか(製法のポイント)
アボンダンスは生乳(全乳)を銅の大釜で温め、天然の凝乳酵素で凝固させて作ります。重要なポイントを順に示します。
使用する牛と飼料
- 主にアボンダンス種、タリーヌ種、モンベリアール種の乳牛。
- 夏は高地の牧草、冬は乾草が中心。サイレージは使用不可。
製造工程の要点
- 生乳を加熱し凝固 → カット → 型入れ → 圧搾。
- 塩水で洗うウォッシュタイプの工程があり、クラスト(外皮)が黄金〜茶色に変化。
- 最低熟成100日以上。伝統的に地下の熟成室でじっくり寝かします。

サイズと栄養的特徴
典型的なホールは直径38〜43cm、重さ7〜12kg。乳脂肪分は48%前後と高めで、1kgのチーズに対して約10kgの生乳が必要です。
味の特徴とテクスチャー
アボンダンスの味はフルーティーな甘み、ヘーゼルナッツに似たナッツ香、濃厚なミルクのコクが混ざった複雑さが魅力です。熟成が進むとさらに旨味(アミノ酸由来)が増し、わずかなスパイス感やウォッシュチーズに似た力強さも感じられます。
テクスチャーはセミハードで切り口はしっとり。中心部はややクリーミー、外側に向かってしっかりとした歯ごたえを持ち、食べ比べると部位ごとの違いが楽しめます。

アボンダンスチーズの美味しい食べ方
単体でも料理素材でも楽しめる万能型のチーズです。いくつか具体的な食べ方を紹介します。
そのままスライスして味わう
薄めにスライスし、クラッカーやバゲットと。中心と外側で味が変わるので、放射状にカットして食べ比べると違いがはっきり分かります。
チーズフォンデュ・ラクレットに
溶かすとコクが増すので、フォンデュやラクレットの材料として最適。パンや蒸し野菜に絡めるとリッチな味わいになります。

グラタン・オーブン料理
グラタンやオーブン焼きに使うと、上品なコクとナッツ香が料理に深みを加えます。野菜やハムと相性◎。

サンドイッチ・バーガー
アボカドやスモークハム、目玉焼きと合わせたオープンサンドがおすすめ。濃厚さが具材とよく馴染みます。
簡単レシピ:アボンダンスのオーブン焼き(2人分)
- 耐熱皿にスライスしたジャガイモ(茹でたもの)を並べる。
- ベーコンを散らし、アボンダンスを薄切りにしてのせる。
- 200℃のオーブンで10〜12分、表面がこんがりするまで焼く。
- 仕上げにブラックペッパーとパセリを散らす。
アボンダンスチーズに合うお酒・飲み物(ペアリング)
ペアリングはチーズを引き立てる重要な要素。代表的な組み合わせを挙げます。
白ワイン
辛口のサヴォワ産白ワイン(例:ルーセット・ド・サヴォワ等)が最良。フルーティーさがチーズの甘みを補助します。
赤ワイン
軽め〜中重の赤(ピノ・ノワール、コート・シャロネーズ等)とも相性がよく、スパイス感ある赤は熟成感とバランスが取れます。
日本酒
コクのある純米酒や山廃系はチーズの旨味と合います。和風の料理に合わせる場合は特におすすめです。
ビール・シードル
香りのあるエールや、サヴォワ地方でよく飲まれるシードルもマッチします。

保存方法と購入のポイント
保存方法
- 冷蔵庫で保存。切り口はラップで覆い、乾燥を防ぐために穴あき容器やチーズペーパーが理想。
- 購入後は1〜2週間を目安に早めに食べきるのが味の面でもおすすめ。
- 長期保存したい場合は、冷凍では風味が損なわれるため推奨しません(調理用には可)。
購入のポイント
- AOP表示があるものを選ぶと品質が保証されます。
- 販売店でカットしてもらう際は断面を見せてもらい、色・水分感をチェック。
- 希少なため専門店やオンラインの取り扱いが中心。季節在庫に注意。
よくある質問(FAQ)
Q:アボンダンスとコンテ、グリュイエールは似ていますか?
A:同じく山岳系のチーズで共通点はありますが、アボンダンスはよりフルーティーでナッツ香、コンテはややドライでうま味寄り、グリュイエールはキャラメルのような甘みが特徴です。
Q:どこで買えますか?
A:チーズ専門店や輸入食材店、信頼できるオンラインショップで購入可能。AOP表記を確認しましょう。
Q:子ども・高齢者に与えても大丈夫ですか?
A:一般的には問題ありませんが、生乳使用のチーズは免疫の弱い人(乳幼児・妊婦・免疫抑制状態)には注意が必要です。心配なら加熱(調理)して提供するのが安全です。
まとめ
アボンダンスチーズは、フランス・アルプスの自然と伝統が生んだ希少なセミハードチーズです。フルーティーでナッツのような香り、濃厚なコクが特長で、シンプルにスライスしても、フォンデュやラクレット、グラタンの素材としても活躍します。AOPの規格に守られた生産は品質を保証しますが、その分入手はやや難しいため、専門店で状態を確認して購入するのがおすすめです。ぜひ一度、本場の風味をお試しください。
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