硫酸カルシウム(いわゆる石膏)は、牛のカルシウムと硫黄を同時に補給できる天然由来の飼料添加物です。乳牛の乾乳後期におけるDCAD調整で乳熱(低カルシウム血症)を予防したり、肉牛で尿pHを下げて尿石症の発生を抑えるなど、現場で使える実践的な効果が確認されています。本記事では特許・研究・現場資料をもとに、給与量の目安、DCAD計算例、尿pHの測り方と注意点を図解でわかりやすくまとめます。
この記事の要点
- 硫酸カルシウム(石膏)はCaとSを同時補給でき、嗜好性が良い飼料添加物。乳熱・尿石症対策に使いやすい。
- 乾乳期のDCAD調整で乳熱リスクを下げる。尿pH目標は 5.7〜6.9(乳牛の乾乳後期の目安)。
- 給与量は用途により異なる。一般は飼料乾物の0.2〜2.0%、乳熱予防の目安は約100g/頭/日(参考値)。必ずモニタリングを行う。
硫酸カルシウム(石膏)とは:現場で押さえるべきポイント
硫酸カルシウム(主に二水和物)は飼料用に使われることが多く、カルシウム含量は約23〜29%、硫黄も同時に補給できます。第一胃内微生物の硫黄需要を満たすことで微生物タンパク合成を支える点も重要です。

乳牛への効果:乾乳期のDCAD調整と乳熱予防
DCADとは何か(簡潔)
DCAD(Dietary Cation–Anion Difference)は飼料中の陽イオン(Na, K)と陰イオン(Cl, S)の差を示す指標です。 陰イオンを増やしてDCADを負にすることで血液を軽度に酸性に傾け、分娩後の骨からのカルシウム動員を助けます。
現場目標(参考値)
- 推奨DCAD(目安): -50〜-150 mEq/kg DM(参考レンジ)
- 尿pHの目標(乾乳前〜分娩直前): 5.7〜6.9
注意:DCADは飼料全体で計算する必要があります。単独の添加物だけで設定せず、既存飼料の成分を必ず把握してください。
肉牛への効果:尿石症予防と嗜好性
肥育期の高リン飼料ではリン酸マグネシウムなどの結石(尿石症)が問題になることがあります。硫酸カルシウムの添加は尿pHを低下させることで結石形成のリスクを下げ、同時に嗜好性を大きく損ねにくい利点があります。
給与量の目安(用途別・参考値)
| 用途 | 給与量(参考) | 備考 |
|---|---|---|
| 一般的な栄養補給 | 飼料乾物の0.2〜2.0%(体重・飼料により調整) | 肉牛・乳牛共通の概念的目安 |
| 乳熱(乾乳期)予防 | 約100g/頭/日(濃厚飼料に混合して給与) | 乾乳後期(最大21日程度)を目安に運用 |
| 尿石症予防(肉牛) | 飼料乾物の0.3〜1.5%(事例による) | 尿pH・摂取量で調整 |
※上記は文献・特許・現場報告の参考値です。実際は牛群・飼料成分・給餌方法に応じて専門家(獣医師・畜産栄養士)と相談してください。
現場での運用手順(チェックリスト形式)
- 既存飼料の分析:Na, K, Cl, S(mg/kg DM)を把握する。
- 目標DCADを決める(例:乾乳期は-50〜-150 mEq/kg DM)。
- 硫酸カルシウムの投入量を試算し、混合均一性を確認する。
- 初期は少量から始め、7〜14日ごとに尿pHを測定して調整する。
- 嗜好性(摂取量)と体調(食欲、糞便状態等)を常時観察する。
尿pHの測定方法(現場で手軽にできる)
市販の尿pH試験紙を用いて、朝一番の尿または直近の排尿を採取して測定します。複数頭の平均を取ると群の傾向が把握しやすくなります。目安は先述の 5.7〜6.9。
安全性とリスク管理
- 過剰添加は嗜好性低下や消化バランスの乱れを招く可能性があるため、長期高添加は避ける。
- DCADを過度に負にすると電解質バランスに影響が出るため、必ず尿pHと摂取量で確認する。
- 添加前に原料の粒度や混合性を確認し、粉塵対策を行う(作業者安全の観点からも重要)。
よくある質問(Q&A)
Q1. 硫酸カルシウムと塩化アンモニウムはどちらが良い?
A. 両者とも陰イオン化に使われますが、嗜好性や取り扱い性、二次影響が異なります。塩化アンモニウムは嗜好性低下が起きる場合があり、硫酸カルシウムは比較的嗜好性が良好なため現場で使いやすい場合があります。用途に応じて選択してください。
Q2. どれくらいの頻度で尿pHを測れば良い?
A. 導入直後は週1回、安定期には2週間に1回程度を目安に群の平均傾向を確認します。変化があれば追加測定を行ってください。
まとめ
- 硫酸カルシウム(石膏)は乳牛の干期のDCAD調整や、肉牛の尿石症予防に有効な現場対応策です。
- 給与量は用途により幅があり、飼料全体の成分を見て調整する必要があります。
- 導入時は尿pHと摂取量をモニタリングし、獣医・栄養士と連携して運用することで安全かつ効果的に使えます。
※本記事の数値は一次情報(特許・研究・普及資料)を参考にした現場向けの参考値です。各農場の状況により適切量は変動します。疑問や不安がある場合は専門家に相談してください。
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