乳牛の周産期病を徹底解説|ケトーシス・乳熱・第四胃変位の予防策

乳牛の周産期病であるケトーシス・乳熱・第四胃変位の症状と予防策をまとめた図解イラスト 酪農
乳牛の周産期病3大疾患をわかりやすく図解
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乳牛の「周産期」とは、出産前後の代謝負荷が最大となる重要な時期です。この期間に適切な栄養管理や出産環境の整備を怠ると、ケトーシス乳熱第四胃変位といった周産期病が発生し、生産性の低下や廃用リスクを高めてしまいます。本記事では、理解しやすい言葉で、3大周産期病の特徴から乾乳期のポイント、最新統計データまでを網羅的に解説します。

牛さん
牛さん

ケトーシス・乳熱・第四胃変位=3大周産期病を防げ!

1. 周産期病とは?

  • 定義:出産前後の代謝変動やストレスによって起こりやすい疾患の総称
  • 主なリスク:乳量減少、採算性低下、繁殖成績の悪化、最悪では廃用(肉用牛として売却)
  • ポイント:代謝負荷の大きさを理解し、予防することで発症率を大幅に抑えられる
牛さん
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周産期病を防げば、乳量・繁殖・採算すべて改善!


2. 3大周産期病の特徴

周産期病の中でも特に発生頻度が高く「3大疾病」と呼ばれるものをご紹介します。

2-1. ケトーシス(ケトン病)

  • 原因:出産直前から出産後初期にかけ、エネルギー不足で体内脂肪を分解し過ぎる
  • 症状
    • 食欲低下
    • 乳量の急激な減少
    • 口や尿から甘酸っぱいケトン臭
  • 早期発見のコツ:尿中ケトン体検査キットや血中ケトン体検査キットを産後5日後に使用する
牛さん
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ケトーシスは出産前後のエネルギー不足が大きな原因!

酪農現場で使われるケトン体検査用紙
酪農現場で使われるケトン体検査用紙
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2-2. 乳熱(低カルシウム血症)

  • 原因:分娩時に母体カルシウムが大量に失われ、血中濃度が急降下
  • 症状
    • 首振りや筋肉けいれん
    • 起立困難
    • 重度では反芻運動停止や意識障害
  • 予防策
    • 出産前に低カルシウム飼料で“カルシウム貯蔵”を促進
    • 分娩直後は可溶性カルシウム製剤を投与
牛さん
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分娩直後は可溶性カルシウム製剤の投与が効果的

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2-3. 第四胃変位(四変/LDA・RDA)

  • 原因:胃内ガスの増加や姿勢変化で本来の位置から胃がずれる
  • タイプと頻度
    • 左方変位(LDA)…約90%
    • 右方変位(RDA)…約10%
  • 症状
    • 食欲不振、反芻運動の減少
    • 触診で腹部の左右非対称な膨隆
  • 対応:ガス排出、軽度は矯正で回復。重度は外科的整復が必要
牛さん
牛さん

左変(LDA)が圧倒的に多い!全体の約90%

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3. その他の周産期リスク疾患

  • 乳房炎
    • 細菌感染による乳房の腫脹・疼痛、乳汁に血液や膿が混入
    • 搾乳前後の消毒徹底と早期診断・治療が重要
  • 繁殖障害
    • 受胎率の低下、次回分娩間隔の延長
    • 子宮内膜炎やホルモンバランスの乱れが原因
牛さん
牛さん

繁殖成績を守るには、周産期の管理が重要!


4. 管理と予防のポイント

4-1. 乾乳期(出産前60~90日)の栄養管理

  • **ボディコンディションスコア(BCS)**を3.0~3.5に維持
  • 過剰な濃厚飼料給与を避け、良質な粗飼料中心に
牛さん
牛さん

乾乳期は“BCSの適正維持”が超重要!

4-2. 定期的なBCSモニタリング

  • 月1回以上チェックして、餌設計をその都度調整
  • BCS変動が大きい個体は重点管理
ボディコンディションスコアの指標

4-3. 清潔な出産環境づくり

  • 寝わら交換・床の消毒をこまめに実施
  • 初乳は生後6時間以内に、3〜4リットル以上を確実に与える
牛さん
牛さん

初乳は“生後6時間以内”が鉄則です!

A calf drinking milk from a bottle, showing early-stage dairy farming care
哺乳瓶でミルクを飲む子牛

4-4. 子牛(産後0~3週間)の個別ケア

  • 個室または小群での管理
  • 食欲、排便・排尿、体温を毎日確認
  • 異常が見られたら速やかに獣医師へ相談
牛さん
牛さん

小さな変化に気づく“観察力”が健康のカギ!

4-5. 分娩監視と難産予防

  • 分娩予定日±3日を「ハイリスク期」として重点管理
  • 無理な牽引は禁物。適切な補助で難産を避ける
牛さん
牛さん

“無理な牽引”は絶対NG!子牛も母牛も危険です!


5. 統計データで見る現状と改善すべきポイント

項目数値意義
平均除籍産次3.42周産期トラブルによる廃用の目安
平均除籍年齢(ヶ月)70.3(約5.9年)生産寿命をいかに延ばせるかの指標
子牛死亡率(北海道・H24)3.0%地域差が大きく、管理の徹底が課題
子牛死亡率(他都府県・H24)1.5%全国平均より高い地域への対策必須
分娩間隔(現在)435日(約14.5ヶ月)365日(理想値)との差が乳量に影響

これらのデータから、乾乳期・周産期管理の徹底が生産性向上とコスト削減に直結することがわかります。

牛さん
牛さん

周産期管理の精度=“生産寿命”と“経営効率”を左右する最重要因子!


6. おわりに

周産期病は「起こってから対処する」よりも、「起こらせない」ことが何よりも大切です。

  • 乾乳期の栄養計画
  • 清潔で安心できる出産環境
  • 新鮮牛のきめ細かな観察

これらを徹底することで、乳牛の健康寿命を延ばし、長期的な収益性を高めることが可能です。まずは自分の牧場で、今日からできる小さな改善策をひとつずつ取り入れてみましょう。

牛さん
牛さん

“治療”より“予防”がコストも手間も断然おトク!


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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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