作文は「経験」を写すための技術です。酪農の現場での一場面を短く切り取り、そこから問題意識・具体行動・未来の設計へと繋げる――この流れを意識すれば、読み手(=審査員)の心に残る作品になります。本記事は、毎日農業記録賞の高校生部門優良賞・一般部門優秀賞を受賞した筆者が、導入の作り方・本文の組み立て方・推敲チェックまで、実例とテンプレで丁寧に解説します。
酪農の夢コンクールとは?
コンクールの概要
- 名称:JA全農学生「酪農の夢」コンクール
- 主催:JA全農(全国農業協同組合連合会)
- 目的:若い世代の視点で「酪農の夢」を表現し、酪農業界へ新しい活力を届ける。
- 対象:高校・専門学校・大学などの酪農・畜産系の学生
- 開始:2007年、第19回(2025年)は過去最多の287作品が46校から応募
応募要項のポイント(次回向け)
※2025年応募は終了。以下は次回向けの参考情報です。
- テーマ:自由(酪農の経験・未来像・課題など)
- 形式:A4用紙2~4枚(手書き・ワープロ可)
- 締切:例年9月上旬
- 審査基準:独創性、理解度、表現力、未来志向
賞と副賞(例)
- 最優秀賞:賞金20万円+牧場研修(3泊4日)
- 優秀賞:賞金10万円
- 優良賞:賞金3万円
- 参加者全員:図書カード1,000円分
毎日農業記録賞とは?
50年以上続く日本最大級の農業作文コンクール
毎日農業記録賞は1973年に創設され、農業や食、地域の記録を後世に残す目的で続いている歴史ある賞です。
2025年で第53回となり、毎年1000編以上が集まる全国規模のコンクールとして定着しています。

この賞の意義
- 農や食に関する体験・思いを2800字程度で記録する
- 高校生も一般の農業者も応募可能
- 受賞作は新聞紙上に掲載され全国的な注目を浴びる
- 社会問題(食糧自給率、環境、地域活性)に提言する場でもある

2025年(第53回)の部門と賞
- 一般部門 最優秀賞(中央審査委員長賞・新規就農大賞含む):賞金30万円(計6編)
- 優秀賞:賞金10万円
- 高校生部門:構成はほぼ同じ
筆者はこの第53回で一般部門優秀賞を受賞しました。

受賞につながる作文の書き方
1. テーマ設定:自分の経験を軸にする
テーマは「今までの経験」から選ぶのが最も書きやすく、説得力が出ます。
筆者の場合はこの3つを軸に構成しました。
- 高校:部活の仲間と取り組んだ共進会の経験
- 大学:酪農サークルで会長を務めた経験
- 社会人:現場で直面した苦悩と成長
事実と気づきを丁寧に書くことで文章に厚みが生まれます。
2. 導入文が“勝負どころ”
読み手の心をつかむために、導入部分がもっとも重要です。
全体の2割ほどを使ってOK。
おすすめは「その瞬間の情景を切り取る」こと。例:
「朝霧の牛舎。干し草の匂いに混じって、牛たちの小さな鼻息が聞こえる。今日は、あの牛のために何ができるだろうか。」
「ドラッグストアで牛乳が割引されている。どうすればもっと飲んでもらえるのだろう。」
導入チェック
- 時間帯や場所を明確に示しているか
- 具体的な一場面(会話・音・匂い)で始まっているか
- 読み進めたくなる疑問や感情を含めているか
3. 本文:課題→対応→学び(全体の約6割)
本文は「事実」と「考察」を交互に配置します。章ごとに小見出しを付けると審査でも読みやすくなります。典型構成は下記。
- 背景:何が起きたか(事実)
- 課題:なぜ問題だと感じたか(分析)
- 対応:あなたが取った具体的な行動(回数や期間、関係者)
- 結果と学び:成果(改善した事実)と今後への示唆
本文チェック
- 対応は「誰が」「何を」「いつ」「どのように」を明示しているか
- 可能なら具体的な数値(改善率・参加人数など)を入れているか
- 最後に必ず「学び(気づき)」を1~2文で示しているか
筆者が実際に使った構成は以下の通りです。
- 導入:酪農学園大学に入るまでの話、活動内容
- 苦悩:知識や技術の差による認識のズレ
- 解決:勉強会を開き、知識を共有し合った
- 未来:消費者と生産者の認識のズレを埋める活動(情報発信・教育ファームなど)
時系列・因果関係を意識すると、読みやすい文章になります。
4. 結論:未来行動(全体の約2割)
結論は「短く・力強く」。これまでの内容から論理的に導かれる行動計画を書き、期待される効果を示します。例:「地域向けミルク教室を年4回開催し、消費率を6ヶ月で10%改善する」など。
結論チェック
- 行動が具体的で実現可能か
- 期待効果が明確に書かれているか
- 短く読み返しやすいか(音読で確認)
5. 書き終えたら必ず“声に出す”
声に出して読むと、文章のリズムや違和感がすぐにわかります。
先生・親・友人に読んでもらうと、誤字や表現の癖も指摘してもらえます。
よくある疑問(短く回答)
Q:字数や枚数が厳しいときは?
A:重要な体験と学びだけを残し、冗長な説明は削る。箇条書きのように短く要点を押さえると審査に好印象です。
Q:書き直しは何回が目安?
A:最低2回は音読して推敲、第三者(先生・友人)に1回読んでもらうことを推奨します。
筆者からの一言:経験こそが最強の材料
作文は「経験」がすべてです。
高校生に3年生の受賞者が多いのは、それだけ多くの経験を積んでいるからです。
研修に行く、資格に挑戦する、部活やサークルで活動する…。
どんな経験も無駄にならず、あなたの作品を強く支えます。
そして、今回の作文を書くという行為も、未来のあなたにとって必ず財産になります。
ぜひ挑戦してみてください。
参考:毎日農業記録賞は2800字前後(A4で5枚以内)を目安に、酪農の夢コンクールはA4 2~4枚が目安です。応募要項は毎回更新されるので、公式発表を必ず確認してください。
免責:本稿は筆者の経験に基づくアドバイスであり、応募の合否を保証するものではありません。
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