ライオルチーズ(Laguiole)は、フランス・オーヴェルニュ地方オーブラック高原で育まれた伝統のセミハードチーズです。AOP認定を受けた希少な一品で、ナッティな香りとクリーミーなコクが魅力。この記事では「ライオルチーズ 歴史」「ライオルチーズ 食べ方」「ライオルチーズ 特徴」を中心に、家庭で作れるアリゴレシピや保存・購入のコツまで、分かりやすく丁寧に解説します。
ライオルチーズの歴史と起源
ライオルチーズは、フランス南中央部のオーヴェルニュ地方、オーブラック高原(標高約800〜1,400m)にある小さな村「ライオル(Laguiole)」の名を冠したチーズです。19世紀に高原の修道院で僧侶によって作られた記録があり、地元の牛飼い(buronniers)に伝わって現在に至ります。一部の古い記録や民間伝承ではより古い起源(2,000年前にさかのぼる可能性)を示唆するものもありますが、確実に言えるのはこの地で長く親しまれてきた伝統的なセミハードチーズだということです。
1961年にはAOP(Appellation d’Origine Protégée、原産地呼称保護)に基づく品質・生産基準が導入され、生産区域や使用する乳種、製法などが厳密に定められています。現在の主要生産地域はAveyron、Cantal、Lozèreの3県で、協同組合や小規模生産者が伝統を守って生産しています。
生産方法と原料
ライオルチーズは生乳(非加熱処理)を原料とする点が重要です。主にAubrac種やフレンチシンメンタール種といった高原牛のミルクが用いられ、放牧期間(5月〜10月)に採取された乳が品質の基準となります。
- ミルクを温め、乳酸菌とレンネットを加えて凝固させる。
- カード(凝乳)を切ってホエイ(乳清)を排出する。
- カードを型に入れてプレス(非加熱圧搾)。
- 塩を加え、最低4ヶ月(一般的には6〜12ヶ月)熟成させる。
1ホイール(1輪)は40〜50kgと大型で、年間生産量はおおよそ600トンほどと限られています。生熟度の若い段階(トム)は柔らかく、アリゴなどの料理に適しています。

特徴・味わい
外皮は厚く乾燥した灰橙色(熟成が進むと茶褐色へ)。内部は麦わら色でホロホロと崩れるような質感を持ちます。脂肪分は高め(約45%以上)で、口当たりはクリーミー。
味わいの特徴は次の通りです:
- 最初に感じるのは豊かなミルクのコク。
- ヘーゼルナッツのような香ばしさと軽い酸味。
- 熟成が進むと深い旨味とまろやかさが増す。
- 全体に素朴で力強い風味が特徴。
近縁のカンタルやサレールと比べても、ライオルは風味にやや繊細さと伸びのあるテクスチャー(特に若いトムの段階)を併せ持つ点が魅力です。
おすすめの食べ方・ペアリング
ライオルはテーブルチーズとしてそのままカットして楽しめますが、代表的な食べ方はアリゴ(Aligot)です。伸びる食感と濃厚な風味が特徴で、じゃがいも料理と相性抜群。
そのまま
薄くスライスしてパンやクラッカーと合わせると、チーズ本来の香りとコクをダイレクトに楽しめます。
アリゴ(Aligot)
じゃがいもと混ぜて練り上げることで、ねっとりと伸びる独特の食感が生まれます。家庭で作る際はモッツァレラを少量加えると伸びが出しやすくなります。

ワインペアリング
- 赤ワイン:果実味がしっかりしたマルシヤック(Marcillac)やカオール(Cahors)など。
- 白ワイン:辛口のドライタイプ。酸味がチーズのコクを引き立てます。
また、サラミやハムと合わせたチーズボードも人気です。
簡単アリゴレシピ(家庭向け)
材料(2〜3人分)
- じゃがいも(男爵など) 500g
- ライオルチーズ 200g(またはライオル+モッツァレラ 150g+50g)
- 生クリーム 100ml
- バター 50g
- にんにく 1片(お好みで)
- 塩・こしょう 適量
作り方
- じゃがいもを皮をむいて一口大に切り、柔らかくなるまで茹でる。
- 湯切りして熱いうちに裏ごし(またはマッシャーで潰す)。
- 鍋に移し、弱火でバターと生クリームを加えて混ぜる。にんにくを効かせたい場合はみじん切りで一緒に加える。
- チーズを少しずつ加え、木べらでよく練る。チーズが溶けて伸びるようになったら塩・こしょうで味を整える。
- なめらかにのびる食感になったら完成。熱いうちにどうぞ。

ポイント:家庭ではモッツァレラを混ぜると伸びが出やすい。じゃがいもの水分量で伸び感が変わるので調整してください。
保存と買い方のコツ
買うときのポイント
- 製造日・熟成期間を確認する(短いほど若いトム向け、長いほど味が濃い)。
- 皮に焼印(Aubrac牛のマークなど)がある場合は正規品の目安。
- 量が大きいため、専門店やオンラインで小分け販売を探すのも手。
家庭での保存方法
- 未開封:冷蔵(チーズ用の温度帯、目安は2〜8℃)。
- 開封後:ラップで包み、さらに密閉容器に入れて冷蔵。乾燥が気になる場合はラム酒を少量含ませたキッチンペーパーを側面に置くと風味が守られます。
- 長期保存は避け、開封後は1〜2週間を目安に消費するのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. ライオルチーズはどこで買えますか?
A. チーズ専門店や輸入食材店、オンラインの専門ショップで購入できます。AOP表示や製造者情報をチェックしましょう。
Q. アリゴ作りに代替チーズはありますか?
A. ライオルが手に入らない場合、カンタルやフレッシュなコンテチーズをベースに、モッツァレラを加えて伸ばすのが一般的です。
Q. ライオルとカンタルの違いは?
A. 両者は同じ地域のチーズですが、ライオルはやや繊細で伸びのある食感、カンタルはより硬めで力強い旨味が特徴です。熟成期間でも風味が大きく変わります。
まとめ:ライオルチーズでフランスの伝統を楽しもう
- ライオルはオーブラック高原発祥の伝統的セミハードチーズで、AOPで保護されている。
- 生乳を原料にし、40〜50kgの大型ホイールを6〜12か月ほど熟成して作られる。
- 味はナッツやミルクのコクが特徴で、若い「トム」はアリゴに最適。
- 食べ方はそのまま・アリゴ・チーズボード、ワインは果実味のある赤や辛口白が合う。
- 家庭ではモッツァレラを少量加えるとアリゴの伸びが出しやすい。保存は冷蔵で開封後は1〜2週間が目安。
ライオルチーズは歴史と土地の個性が詰まったフランスの伝統チーズです。テーブルでそのまま味わうのはもちろん、アリゴのような郷土料理で素材の力を最大限に引き出すことができます。初心者でも比較的取り入れやすく、ワインやパン、じゃがいも料理と合わせれば家庭の食卓がぐっと豊かになります。
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