はじめに|この記事を作り始めたきっかけ
初めまして!現在、関西の牧場で農場長を務めているみやむーと言います。よろしくお願いします!
この記事を書こうと思ったきっかけはサークルの会長を務めていた大学生の頃に感じたことになります。
大学のサークルでは実家が酪農をしている人や農業高校出身で牛の基礎が身についている人と初めて牛と触れ合う一般高校や非農家の人などたくさんの人がいました。
当時のサークルでは人によって技術や知識の差があることが問題になっており、基礎知識の重要性を認識しました。
実際の現場で学ぶことも大変重要なことではありますが、現場でやっているうちになぜこの牛は耳が垂れているのか?その対策法は?と結びついていくには座学による知識が大切だと感じたからです。
この酪農基礎講座では農業高校に入りたての人や酪農の仕事に興味ある方など初心者にも分かりやすい記事を作っていこうと思いますので、分からないことがあったらぜひコメントを残していってください。
日本における乳牛の飼養戸数・頭数
2023年のデータになりますが、世界における牛の飼育頭数(肉牛・乳牛を含む)はブラジルが一位で2億3,862万頭。2位がインドで1億9,447万頭、3位がアメリカで8,844万頭です。
日本は60位で404万頭と言われており、そのうち乳牛の飼養頭数は131万頭(令和6年2月現在)で前年に比べ、4万3000頭(3.2%)減少しています。
飼養戸数は1万1,900戸(令和6年2月現在)で700戸(5.6%)減少していますが、1戸あたりの飼養頭数は110.3頭で、前年に比べ2.7頭(2.5%)増加しています。
なぜ飼養頭数・戸数が減少し、1戸あたりの頭数が増えたのか
日本における乳牛の飼養頭数や飼養戸数の減少に対し、1戸あたりの頭数が増加した背景には、いくつかの要因が絡んでいます。
- 家族経営の酪農家の減少(小規模牧場の減少)
高齢化と後継者不足が深刻な問題となっており、これが主な要因です。多くの家族経営の小規模な酪農家が廃業や縮小を余儀なくされており、その結果、飼養戸数が減少しています。家族経営の牧場は地域社会においても重要な役割を果たしてきましたが、現在の厳しい経営環境により、持ちこたえるのが難しくなっています。 - 飼料や設備のコスト高騰による経営難
世界的な飼料費やエネルギーコストの上昇が酪農業に大きな負担を与えており、それが経営難を引き起こしています。これにより、飼養戸数が減少し、安定した経営を維持するために規模を拡大する必要に迫られるケースが増えています。 - ロボットを活用したメガファームの台頭
技術革新が進む中、ロボット搾乳機や餌寄せロボットなどの自動化技術を導入した大規模な酪農場(メガファーム)が登場しています。これらの施設は効率的に運営されており、1戸あたりの頭数が増加しています。ロボットによる搾乳や餌の管理など、従来の手作業を減らすことでスケールメリットによるコスト削減と生産性向上を実現しているため、経営の効率化が進んでいます。また、政府により規模拡大が推し進められ、多額の補助金が出たこともメガファーム増加の一助になっていると考えられます。
これらの要因が複合的に影響して、1戸あたりの飼養頭数が増加し、全体の飼養頭数と戸数が減少する傾向となっています。規模の拡大が進む一方で、家族経営や小規模農家の減少という課題も浮き彫りになっています。
飼料高騰についての詳しい記事はこちら↓
メガファームについての詳しい記事はこちら↓
まとめ
日本の乳牛の飼養頭数や飼養戸数が減少し、1戸あたりの飼養頭数が増えた理由は次の3つです:
- 家族経営の酪農家の減少
高齢化や後継者不足、経営の厳しさから、小規模な家族経営の牧場が減少しています。 - 飼料や設備のコスト高騰
飼料費や設備のコストが上昇し、経営が難しくなっているため、大規模農家はコスト削減のために規模を拡大し、経営難の小規模農家は廃業を余儀なくされました。 - ロボット技術を使った大規模農場(メガファーム)の登場
ロボット搾乳機、餌寄せロボットなどの自動化技術を活用した大規模農場が増え、効率的に生産が行われているため、1戸あたりの頭数が増えています。
これらの要因が絡んで、全体の飼養頭数と飼養戸数が減少し、1戸あたりの飼養頭数は増えているのです。
次回の酪農基礎講座では、日本で主に飼養されている乳牛の5大品種について解説していこうと思います。
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