普段から何気なく口にしている牛乳や乳製品ですが、実は生産するために2年間の月日がかかっています。
それだけの月日がかかる理由は『牛乳を出してくれるのは子供を産んだお母さん牛』のみ、つまり分娩を経験しなければならないからです。
そこで今回の酪農基礎講座では乳牛の一生について解説していきます。
乳牛の発育段階及び出産の有無による名称
乳牛は発育段階、出産の有無によって様々な名称があります。
出産の有無での名称
経産牛
分娩を経験した牛を経産牛といいます。特に1産目を初産牛といい、分娩を繰り返すことで2産、3産と産次数を重ねていくことになります。3〜5産目の乳量が最も多いです。
未経産牛
出生から初回分娩までの牛を未経産牛といいます。経産牛とは違い牛乳を生産することはまだできません。
発育段階での名称
哺育期:子牛
出生から離乳までの期間を哺育期といいます。生時体重は約40〜50kgです。生まれてからすぐに初乳(分娩直後に出るお母さんの乳)を飲み、免疫を獲得します。
通常、3ヶ月齢程度で離乳します。早期離乳など、牧場の方針によって期間は左右します。
育成期
離乳から初回分娩までの期間を育成期といいます。通常、14〜16ヶ月齢、体高120cm程で受胎します。妊娠した後、約280日の妊娠期間を経て分娩します。
乳牛の繁殖からみた一生
前述した通り、牛乳を生産するためには分娩を経験しなければなりません。つまり、牛乳の生産と繁殖は密接な関係になっています。そこで、繁殖との関係から見ていきましょう。
生産と一生
乳牛は出生後、14〜16ヶ月齢程度で受胎します。その後、280日の期間を経て分娩し乳生産(泌乳)を始めます。分娩後、60日ほどで発情回帰(受胎できる状態)になります。2産目以降は分娩前の約60日間は出産に備えて乳生産を休みます(乾乳)。このように分娩・泌乳期・乾乳期を繰り返して産次を重ねていき、6年ほどで廃用となる。経済動物である乳牛は乳量の低下や疾病などで採算が取れなくなった牛は廃用となる。
長命連産性
長命連産性とは、長期間にわたって健康で生産的な乳牛が、繰り返し子牛を産みながら高い乳量を維持する特性を指します。現代の酪農家は牛の遺伝子情報を解析(ゲノミック検査)し、長命連産性を高めていくことを目標にしています。
まとめ
乳牛の一生
- 発育段階
- 子牛(哺育期):出生から離乳まで。生まれたての体重は約40〜50kgで、初乳を飲んで免疫を獲得します。
- 育成期:離乳から初回分娩まで。14〜16ヶ月齢で初めて受胎し、280日の妊娠期間を経て分娩します。
- 経産牛と未経産牛
- 経産牛:分娩を経験した牛。乳を生産し、分娩を繰り返すことで乳量が増加します。
- 未経産牛:初回分娩前の牛。乳は生産しません。
- 乳牛の繁殖サイクル
- 乳牛は14〜16ヶ月齢で受胎し、約280日後に分娩。その後、乳生産が始まり、約60日後に次の受胎が可能になります。
- 分娩前に約60日間の乾乳期があり、その後再び乳を生産します。
- 廃用
- 乳牛は約6年で廃用となり、その後は乳量の低下や病気などで生産活動が終了します。
長命連産性
- 長命連産性とは、健康で長期間乳生産を行い、繰り返し出産をしながら高い乳量を維持する特性です。
- 酪農家は遺伝子解析を活用して、長命で高い乳量を維持できる乳牛を育てています。
これらの要素が密接に関係しており、乳牛の健康管理や繁殖サイクルをうまく調整することが、効率的な酪農経営にとって非常に重要です。
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