2025年、国内の飲食業界はかつてない逆風にさらされています。東京商工リサーチの集計では、1〜10月の飲食店倒産が734件に達し過去最多を更新。中でも焼肉店は牛肉とコメの価格急騰が経営を直撃し、値上げの難しさと客離れのはざまで苦境に立たされています。本記事では最新データをもとに原因を分解し、現場で即実行できる実務的な対策を具体例と試算で示します。
現状データの要点(2025年1〜10月)
- 飲食店倒産件数(1〜10月):734件(過去最多)
- 10月単月の全国倒産件数:965件(前年比増)
- 飲食業界の負債総額:1,275億円規模
- 焼肉店の倒産件数(10月時点):46件(統計開始以来の高水準)

倒産急増の構造的要因 — トリプルパンチの正体
1. 牛肉高騰(仕入れコストの上昇)
輸入牛の仕入れ価格上昇は、原価率に直結します。焼肉業態では牛肉がメニュー原価の中心を占めるため、原価変動が利益率へ与える影響が大きいのが特徴です。価格転嫁ができない場合、利益は圧迫され、資金繰りが急速に悪化します。
2. コメ高騰(主食コストの急上昇)
飲食店で使用するコメの価格も急騰しています。たとえば報告例では30kgあたり約8,000円だったものが約25,000円に上がったケースが確認されています。金額差は17,000円で、増加率は約212.5%(=17,000 ÷ 8,000)です。ご飯を提供する業態では累積的に収益を削ります。
3. 人手不足・光熱費上昇・競争激化
人手確保のための賃上げ、及び光熱費の上昇が重なります。特に従業員数が10人未満の小規模店舗が全体の多くを占めるため、固定費の比重が高く倒産リスクが上がります。
経営への具体的なインパクトと試算例
【試算例】平均客単価3,000円、食材原価率30%(=900円)と仮定。牛肉が食材原価の40%を占め、牛肉コストが30%上昇した場合:
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 既存の食材原価 | 3,000円 × 30% | 900円 |
| 牛肉の金額 | 900円 × 40% | 360円 |
| 牛肉増加分(30%上昇) | 360円 × 30% | 108円 |
| 新しい食材原価 | 900円 + 108円 | 1,008円 |
| 新原価率 | 1,008円 ÷ 3,000円 | 33.6% |
この例では原価率が30.0%→33.6%に上昇し、3.6ポイントの圧迫が生じます。利益率が薄い業態では、この変化だけで月次損益が赤字に転じるケースがあり得ます。
現場で直ちに実行できる実務的対策(短期〜中期)
短期(即効性)
- 原材料の部分的調達見直し:部位替えや代替原料の採用で単価を下げる。
- メニュー構成の調整:原価率の低いセット商品や副菜で客単価を維持。
- ポーション管理の徹底:一皿あたりの原価を安定化させるためのマニュアル化。
- 期間限定の価格調整:常設値上げよりも反発が少ない「期間限定」方式を活用。
中期(構造改善)
- 仕入れの長期契約・共同購買:複数店舗での共同購買や地場業者との契約で価格交渉力を高める。
- 地産地消の強化:輸入依存を下げ、輸送コスト変動リスクを低減する。
- 商品ミックスの最適化:高付加価値メニューの比率を上げる(例:コース化、体験価値の提供)。
- 労務の効率化:シフト最適化・業務のRPA化で人件費の過度な上昇を抑える。
マーケティング・収益多角化
- テイクアウト・冷凍販売:原価管理しやすい商品で販路を増やす。
- 定期購入(サブスク)や会員制:安定した売上基盤を構築する。
- SNSと地域連携:地域イベントや他業種とコラボして来店動機を創出。
短いケーススタディ
小規模焼肉店A(席数30、客単価3,200円)は、牛肉高騰で利益が圧迫。対策として「ランチ限定の牛肉半分替えメニュー」「地元産豚の高付加価値メニュー」「共同購買による仕入れ単価2割低下」を導入した結果、6か月で黒字化の目処が立ちました。実行は段階的に行い、顧客反応を見ながら調整することが重要です。
経営者向けチェックリスト(印刷可)
- 直近3か月の食材仕入れ単価を時系列で把握する
- メニューごとの原価率を算出し、15%以上改善余地のある品目を洗い出す
- 仕入先を3社以上リストアップして比較見積もりを実施する
- 1か月分の現金フロー(収入・固定費)を作成し、資金繰りの弱点を明確にする
- 地域の支援制度・補助金の申請可否を確認する(商工会議所等)
この記事のまとめ(要点)
- 2025年1〜10月の飲食店倒産は734件(負債総額約1,275億円)で過去最多ペース。
- 焼肉店倒産が特に深刻:牛肉高騰とコメ高騰、円安・人手不足が主因。
- 原価率の上昇は利益を圧迫し、短期的な値上げだけでは経営が安定しない危険あり。
- 即効性のある対策:部位替えや代替原料、ポーション管理、期間限定の価格調整。
- 中長期では共同購買・地産地消・商品ミックスの見直し・収益の多角化が鍵となる。
2025年は牛肉・コメの高騰を中心に飲食店倒産が過去最多ペースで推移しています。特に焼肉店は原価構造上、急速に影響を受けやすく、短期の資金繰り対策と中期の仕入れ・商品戦略の両面での対応が不可欠です。まずは数値で現状を可視化し、優先順位を付けて手を打つことが生き残りの分かれ目です。
参考:東京商工リサーチ、帝国データバンク、業界報道(2025年集計)
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