脱脂粉乳Tシャツ量産スタート:酪農過剰在庫をアップサイクルで解決

脱脂粉乳を再利用してTシャツを量産するmoment of MILKのアップサイクル事例 乳製品
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2025年、脱脂粉乳という酪農業界の過剰在庫がTシャツとしてよみがえりました。ブランド「moment of MILK」(株式会社Blueprint one)が量産を開始し、廃棄物を資源に変える新たな循環モデルを提示しています。本記事では素材・製法のポイント、量産〜導入の経緯、酪農現場にもたらす具体的な影響を現場目線で詳しく解説します。

なぜ脱脂粉乳が余るのか:背景と現状

脱脂粉乳は生乳から乳脂肪分を取り除いた粉末で、ヨーグルトや加工食品の原料として広く使われます。しかし、2020年の新型コロナウイルスの影響で学校給食が停止したことや観光・インバウンド需要の減少が重なり、需給バランスが大きく崩れました。農林水産省の統計では、2022年5月末に過去最高の約104,200トンに達した在庫が報告され、その後も数万トン規模の在庫が国内倉庫に滞留している状況が続いています(参考:公的統計の動向)。この在庫は乳価の下落や生産調整を招き、酪農家にとって経営上の重荷となります。

moment of MILKの取り組み:発案から量産まで

取り組みを主導するのは株式会社Blueprint one(代表・鈴木大樹氏)。鈴木氏は酪農関連企業での経験から脱脂粉乳の過剰在庫を見てきたことが起点となり、素材としての価値転換を図るブランド「moment of MILK」を立ち上げました。2024年11月にはCAMPFIREでクラウドファンディングを実施し、資金と市場性の検証を行ったうえで、2025年8月下旬に量産をスタート。初回はクルーネックのルーズフィットTシャツからの展開です。

技術のポイント:脱脂粉乳を“繊維”にするしくみ

基本の発想は、脱脂粉乳由来のタンパク質を植物由来のレーヨン等と混ぜて半合成繊維とすることです。現在の配合例としては脱脂粉乳由来繊維50%、綿50%という比率が公表されています。仕上がりはシルクのような滑らかさが特徴で、フッ素フリーのはっ水加工を施すことで日常使いの耐久性と速乾性を両立させています。

量産開始の詳細と導入事例

量産はオンライン販売を中心に開始され、2025年9月にはさっぽろオータムフェストへの出店で北海道から全国展開を図りました。注目すべきは、ミシュラン一つ星レストランや酪農場のユニフォーム採用といったB2B用途での採用事例です。現場での評価ポイントは「着心地の良さ」と「見た目の上質感」。X(旧Twitter)上でも創業者やユーザーによる投稿が増え、波及効果を生んでいます。

酪農への具体的な影響(換算例と期待)

脱脂粉乳の余剰を衣料に回すことで直接的な廃棄削減効果が期待できます。簡易換算の例を示すと、脱脂粉乳を原料として繊維化する際の原料効率や製造プロセスによって差は出ますが、仮に「脱脂粉乳1トンでTシャツ約X枚相当(※製法や配合で変動)」というわかりやすい換算表を提示すると、読者にとってイメージがつきやすくなります。※実際の原料換算はメーカー発表の数値を参照してください。

課題:コスト構造と拡張性

最大の課題は製造原価の高さです。脱脂粉乳由来繊維は工程や加工コストがかかるため、価格競争力を持たせるにはスケールメリットや工程改善が必要です。また、品質安定性(色落ち、強度、洗濯耐久)やアレルギー表記・安全性の担保も継続的に検証すべき点です。今後はツナギなど作業服用途への展開やB2B供給ルートの開拓が鍵になります。

現場への提言:酪農家・地域事業者ができること

  • 地域での過剰在庫の実態把握と量的データの共有。
  • アップサイクル事業との連携窓口設置(集荷ルートの整備)。
  • 導入事例(ユニフォーム等)の共同検証とフィードバック提供。

Q&A(よくある質問)

Q. 脱脂粉乳由来の衣類は洗濯で弱くならない?

A. 現行の製品では耐久性を考慮した混紡設計と仕上げ加工が施されていますが、長期的な耐久は製品ごとに差があります。購入前にメーカーの洗濯表示・耐久試験の情報を確認してください。

Q. アレルギーは大丈夫?

A. 脱脂粉乳は食品由来成分を含むため、乳アレルギーのある方は注意が必要です。EC・商品ページの注意表記やメーカーの安全情報を確認してください。

まとめ — 持続可能な選択肢としての可能性

脱脂粉乳を原料とするアパレルの量産開始は、過剰在庫の廃棄削減と酪農の収入多角化に寄与する有望な試みです。moment of MILKは技術的に脱脂粉乳を繊維化し、実用性のある製品を市場投入しており、既に飲食店や一部酪農現場で採用例が出始めています。一方で製造コストや品質安定性、アレルギー対応などの課題は残り、普及には供給網の整備やコスト低減が必要です。現場としては数値で語れる換算(在庫→製品枚数)や実地検証・導入事例を蓄積することが次の普及の鍵になります。

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参考:ブランド「moment of MILK」(Blueprint one)による量産開始の発表、CAMPFIREのプロジェクト情報、各種業界報道および公的統計を基に執筆。記事中の在庫数は公的統計の報告を参照しています。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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