スイスのチーズは、アルプスの牧草と地域の伝統が生んだ多様な味わいが魅力です。本記事では、世界的に有名なエメンタールやグリュイエールをはじめ、ラクレットやスプリンツなど代表的な種類の特徴、長年受け継がれる製法、そして家庭で楽しめるチーズフォンデュ・ラクレットの簡単レシピまで、写真や図を交えて分かりやすく解説します。初めての方でも本場の風味に近づける選び方や保存のコツがつかめます。
スイスのチーズの歴史 — 起源からAOPまで
スイスのチーズ文化は非常に古く、考古学的には数千年前の乳製品利用の痕跡が示されています。中世には山岳地帯で長期保存できるハードチーズが発展し、地域の交易で重要な価値を持ちました。近代に入ると産地ごとの伝統を守るためにAOP(Appellation d’Origine Protégée、原産地保護)が広まり、品質と伝統を守る取り組みが定着しています。
観光と結びついたチーズ文化(工場見学やアルプスのマルシェ)は、現代のスイスの食観光の重要な柱です。

代表的な種類と特徴(表で比較)
スイスでは数百種(地域差はあります)ものチーズが作られますが、ここでは特に知っておきたい代表種を紹介します。
| 種類 | 主な特徴 | 用途・相性 |
|---|---|---|
| エメンタール(Emmental) | 大きな穴、ナッツのような甘みとまろやかさ、ハードタイプ | チーズフォンデュ、サンドイッチ、グラタン |
| グリュイエール(Gruyère) | コクと旨味、やや小さめの穴、AOP認定 | フォンデュのベース、グラタン、スープの風味付け |
| アペンツェラー(Appenzeller) | 洗い工程で香り豊か、ハーブやスパイスの風味が出ることも | そのままおつまみ、料理に溶かす |
| スプリンツ(Sbrinz) | 非常に硬いエクストラハード、削って使うチーズ | パスタやサラダのトッピング、チーズプレート |
| ラクレット(Raclette) | 溶かして楽しむタイプ、クリーミーでまろやか | ジャガイモやピクルスにかける伝統料理 |
これらはスイス各地の気候や放牧文化、乳種(ブラウンスイス)による風味の違いが反映された結果です。

生産方法:生乳から熟成までの主要工程
スイスの伝統的なチーズ作りは、以下の工程で進みます。多くの工場やアルピネット(山小屋)で、搾乳直後の新鮮なミルクを使うのが特徴です。
- 原乳の受け入れと検査:品質の良い牛乳を確保し、脂肪分や微生物検査を行います。
- 温度調整とスターターの添加:乳酸菌(例:Streptococcus thermophilus、Lactobacillus helveticusなど)を加え、凝固を促します。
- レンネットで凝固、カード(カード)を切る:カードを切ることでホエーを分離します。カードの大きさはチーズの最終的な質感に影響します。
- 加熱・攪拌・排水:種によって温度や攪拌時間が異なり、これが硬さや風味を決定します。
- 成形とプレス:型に詰めて適切な圧力でプレスします。
- 塩漬け(塩水浴)・表面処理:塩は風味と保存性を高めます。アペンツェラーのようにハーブやスパイスで洗うチーズもあります。
- 熟成(アフテ):洞窟や熟成室で数週間〜数年。微生物(プロピオニバクテリウムなど)が働き風味と穴を形成します。
熟成期間と環境(温度・湿度)、使用するスターターや乳の処理が、最終的なチーズの個性を決めます。

スイスチーズの「穴(eyes)」の秘密
あの特徴的な「穴」は、チーズの熟成中にプロピオン酸菌(Propionibacterium)などが乳糖を発酵させ、二酸化炭素を発生させることでできます。ガスが目のような空洞を作り、それが「eyes(アイ)」と呼ばれます。

ポイント:
- 発酵が進むほど穴が大きくなる傾向がある。
- 穴が全くできないチーズは「blind(ブラインド)」と呼ばれ、規格外とされることがある。
- 穴の大きさは製法(カードの切り方、熟成温度など)でコントロールされる。

おすすめレシピ:チーズフォンデュ&ラクレット(家庭でできる簡単レシピ)
チーズフォンデュ(基本レシピ)
材料(2〜3人分):
- エメンタール(またはエメンタール+グリュイエールのブレンド) 200g
- 白ワイン 100ml(辛口)
- 片栗粉(またはコーンスターチ) 小さじ1/2
- にんにく 1片(鍋にこする用)
- 黒胡椒・ナツメグ 少々
- パン、野菜、ゆでじゃがいも 適量
- チーズを細かく刻み、片栗粉と軽く混ぜる。
- フォンデュ鍋ににんにくをこすり、白ワインを温める(沸騰させない)。
- チーズを少しずつ加え、木べらで滑らかに溶かす。必要ならワインを足す。
- とろみがついたら黒胡椒とナツメグで味を整え、パンや野菜をディップして楽しむ。
コツ:強火は避け、ゆっくり溶かすと分離しにくいです。

ラクレット(簡易家庭版)
材料(2人分):
- ラクレット用チーズ 200〜250g
- 小さめのジャガイモ(茹で)4〜6個
- ハム・サラミ・ピクルス 適量
- オーブントースターや魚焼きグリルでチーズを溶かす。専用グリルがあれば表面をこんがりと。
- 溶けたチーズをジャガイモやハムにかけていただく。
コツ:チーズは薄く切ると早く均一に溶けます。付け合わせはシンプルにするとチーズの風味が引き立ちます。

保存方法と選び方のコツ
選び方
- ラベルで産地(AOPなど)を確認する。伝統的な味を求めるならAOP表示が目安。
- 表面が乾きすぎていない、変な臭いがないものを選ぶ。
保存方法
- 冷蔵庫で保存。カットした面はラップで包むか、チーズ専用紙で包む。
- 長期保存する場合は密閉して冷蔵。風味を保つために温度変化を避ける。
- なるべく早めに使い切るのがベスト(硬めのチーズでも数週間以内に)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「Swiss cheese」と日本で売っているものは同じですか?
A1. 「Swiss cheese」は北米市場でエメンタール風のチーズを指すことが多く、本場スイスで作られるものとは製法や風味に差がある場合があります。
Q2. チーズの穴が大きすぎるのは良くない?
A2. 穴の大きさは好みと規格によります。熟成を強めると穴が大きくなるが、スライスや用途によっては不便に感じることもあります。
Q3. チーズフォンデュに合うワインは?
A3. 辛口の白ワイン(ソービニヨン・ブランやシャルドネの辛口)や、地元のフェルネット系の白ワインがよく合います。アルコールを使わない場合は白ぶどうジュースで代用することも可能です。

まとめ
- スイスは多様なチーズ文化を持ち、代表的なものにエメンタール、グリュイエール、ラクレット、スプリンツなどがある。
- 「穴(eyes)」はプロピオン酸菌などの発酵による二酸化炭素で生じ、熟成条件で大きさが変わる。
- 製法のポイントは乳の品質、カードの切り方、温度管理、塩漬け、熟成環境であり、これらが風味と食感を決める。
- 家庭ではエメンタール+グリュイエールのブレンドでフォンデュ、薄切りラクレットで簡易ラクレットが手軽に楽しめる。
- AOP表記や産地ラベルを確認して選ぶと、本場に近い風味を安全に楽しめる(保存はラップやチーズ紙で密閉し冷蔵を推奨)。
スイスのチーズは歴史と土地の個性が反映された多様な世界です。エメンタールやグリュイエール、ラクレットなどは家庭料理にも取り入れやすく、加熱することで風味がさらに引き立ちます。旅行や食材店で本場のチーズを見つけたら、ぜひ産地やAOP表示をチェックして、その違いを楽しんでください。
参考:伝統的な製法・AOPに基づく一般知識をもとに作成しました。
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